ワサビ、ショウガ、ミョウガ

これまで、酸味のあるものと香り、苦味のあるものと香りについて触れてきました。今回は、独特の辛味のあるものを集めてみました。
ところで、基本五味には辛味が入っていません。辛味だけは痛覚や温度感覚を刺激する化学物質によって引き起こされる物理的刺激なのです。辛味成分には揮発性のものと不揮発性のものがあります。前者は、清涼感を伴ない舌や鼻へのツーンとした刺激(辛味)を感じるものの、すぐに辛味を感じなくなってしまいます。後者は逆に辛味を遅く感じいつまでも舌に痺れを残す感覚をもたらします。ワサビは前者、ショウガやサンショウは後者といわれています。
ワサビは、アブラナ科の多年生水生草木で、日本原産の植物です。平成20年のワサビの生産量は約3千740トンで、主な産地は水ワサビ(沢ワサビ)の根茎、葉ワサビ(葉柄)ともに長野県・静岡県で、畑ワサビの根茎が鳥取・島根・山口、葉ワサビが岩手・静岡です。
ショウガはショウガ科の多年草で亜熱帯アジア原産。香気・辛味ともに非常に強い。平成20年の収穫量は4万9,800トン。都道府県別では高知県が42%を占め、次いで熊本県が13%となっています。
ミョウガはショウガ科の多年草で、野菜として栽培しているのは日本だけです。地下茎から出る花穂を花ミョウガ、若い茎を光を当てずに栽培したものをミョウガタケと呼んでいます。平成18年の花ミョウガの収穫量は5,969トンで地域別にみると高知がダントツで75%を占めています。

ワサビ

◎ワサビの産地

◎ワサビの特徴
日本原産のワサビは、日本発の辛味成分で英語にもなっていますが、国内のワサビ(根茎)の生産額の低迷が続いているのはさびしい限りです。ワサビは元々陸生で、冷涼で湿地が多い土地を好みます。また、環境に非常に敏感な作物で、大量生産が難しいのが現実です。ワサビは消臭、抗菌といった作用を持ちますがそれ以外にもさまざまなことがわかってきています。心強い限りです。

アリルイソチオシアネート

◎ワサビの香気成分
kumagaiらは、畑ワサビの精油分析を行い、13種類のイソチオシアン酸エステル、4種類のニトリルと5種類のアルコールおよび1種のアルデヒドを報告している。亀岡らは、花ワサビヘッドスペース成分から、主要成分は6-、7-、8-methylthioalkylnitrileとallyl isothiocyanate、propyl isothiocyanate, 6-methylthiohexylisothiocyanateであったと報じている。また、Etohらは、水ワサビエーテル抽出物からイソチオシアン酸エステル類を中心とした14成分を同定している。畑ワサビおよび水ワサビともに、メイン成分はallyl thiocyanateであった。一方、花ワサビでは、7-methylthioheptano nitrileが主成分であった。

ショウガ

ショウガ

◎ショウガの特徴
世界でも生産は盛んで、東南アジア・アフリカ・中米などで行われています。生姜の品種は根茎の大きさから、大生姜、中生姜、小生姜に大別されています。香辛料、食材、生薬としての利用が盛んです。
辛味成分としてはジンゲロールが含まれ、加熱調理中にショウガオール・ジンゲロンが生じるとされています。

◎ショウガの香気成分
生姜は世界各地で栽培されているがその香味の特徴は一致しない。精油成分の組成比もそれぞれに特徴的である。一般的に、Geranial,Neralが生姜のレモン様香気に寄与しているとされているが、国産の新ショウガについて香気寄与成分を探った研究では、Linalool, Geraniol, Geranial, Neral, Borneol, Isoborneol, 1,8-Cineol, 4-Terpineol, Geranyl acetate, 2-Pinen-5-ol, (E)-2-Octenal, (E)-2-Decenal, (E)-2-Dodecenalの名前が上がっている。

ミョウガ

ミョウガ

◎ミョウガの産地

私たちが普段食べているミョウガは、花のツボミの部分です。開花前のツボミが3~12枚程度あります。夏には小さなツボミをつけ、秋には太く身がしまったものが出回ります。2回の収穫期があります。夏には、ぴったりの香りと味を持ったミョウガはそのまま生で薬味として十分存在感あります。秋ミョウガのほうが大きさ・香りともに良いといわれています。
ミョウガは冥加にも通じることから尊ばれており、「抱茗荷紋」とよばれる家紋があり、日本十大家紋のひとつになっています。

◎ミョウガの香気成分
高村らは、ミョウガ(Zingiber mioga Rosc.)の香気寄与成分をcis-3-hexenol,isopicocamphoneなどと推測し、前者は酵素的に生成されると報じた。また、黒林らは、2-isopropyl-3-methoxypyrazine、2-sec-butyl-3-methoxypyrazine,2-isobutyl-3-methoxypyrazineが、茗荷のgreenでearthyな香りを形作っていると考えられるとしている。

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