香料の原料

調合素材は一般に天然香料と合成香料に分類されます。

天然香料

動植物から抽出圧搾蒸留などの物理的手段や酵素処理して得ます。天然香料は、花や草木、果実などから取り出される植物由来のものがほとんどですが、最近ではビーフやポーク、チキンなどの食肉類(動物性たん白質)やカツオブシ、ホタテ貝などの魚介類、エビやカニなどの甲殻類の抽出物が動物性天然香料として利用されています。

なお、天然香料は食品衛生法で「動植物より得られる物又はその混合物で、食品の着香の目的で使用される添加物」と定義され、使用できる約600品目の動植物名が例示として「天然香料基原物質リスト」(平成22年消食表第337号別添2)に記載されています。それぞれの基原物質からは、部位や製造法の違いによってバラエティのある香料が製造されます。

ローズ

ジャスミンの花

天然香料の生産に使われる植物原料の部位例
使用部位天然香料名使用部位天然香料名
ローズ、ジャスミン、キンモクセイ 樹皮 シンナモン、キハダ
花蕾 カシス 根茎 ジンジャー、ターメリック
全草 ペパーミント、スペアミント、シソ、ローズマリー、セージ 果実 オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、バニラ
ローレル、ウインターグリーン、ユーカリ 種子 ナツメグ、ビターアーモンド、マスタード

用語解説

抽出とは
広辞苑では、固体・液体からある物質を、液体で溶解してとり出すこととあります。お茶を淹れることを想像してください。お茶の葉は固体、お湯は溶剤と考えます。とり出したものがお茶です。香料業界では、ある物質ではなく、お茶のような香気成分全体をバランスよく取り出すことに腐心しています。
圧搾とは
広辞苑に圧力を加えてしぼることとあるように、主に柑橘系の香料を取り出すときに利用されます。これらは取り出される香料が熱に弱いものに多用されます。
蒸留とは
水蒸気蒸留が一般的です。この方法は、採油する目的のもの(水に溶けやすいものが少ないもの)を水蒸気蒸留釜に詰め、水蒸気を吹き込み加熱する。すると、熱水と精油成分が留出してくるので冷却して液体に戻し、精油を分離する。表中のペパーミント、ジンジャーなどに用いられます。どうして沸点の高いものが採れるのか、面白い化学が潜んでいます。
酵素処理
天然原料中にある香料前駆体にそれを分解する酵素を作用させて香料を得ます。ミルク系のフレーバーでは脂肪分解酵素を、畜肉系のフレーバーではタンパク質分解酵素を用いて作られます。

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合成香料

化学反応を利用した方法でつくられた香料です。合成香料の種類は3000を超えますが、世界市場で取引されている主なものは約500種類です。原料は、石油化学工業や石炭化学工業、パルプ工業などから大量に入手できる化合物などですが、香り物質を得ることさえできれば原料に制限はありません。

合成香料は、産地や気象状況によって香りやコストが異なる天然香料に比べて品質のばらつきがなく、大量生産で安価で安定した供給ができます。合成香料の出現で、それまで上流階級に限られていた香水やオーデコロンを市民が日常的に楽しむことができるようになりました。

一方、食品香料として用いられるもののほとんどは『ネイチャーアイデンティカル』(可食性の天然物に含まれている成分と同一の化学構造のもの)ですが、『アーティフィシャル』(可食性の天然物にはまだ見出せていないが安全性が確認されているもの)には香料物質として有効性の高いものがあります。なお合成香料は、132品目と18の類が「食品衛生法施行規則別表第1」の約400の指定添加物のなかで記載されています。

人間のもっとも敏感な感覚に訴える香料は、香りの微妙なニュアンスと厳しい品質管理とが求められます。このため、酸化・還元・縮合・転位・エステル化などの化学反応を利用する香料の製造は、医薬品と同じ方式が採用され、精製には細心の注意が払われ、必要に応じて熟成という工程をとることがあります。

天然香料の生産に使われる植物原料の部位例

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