香りの生理学

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空気中をただようにおいはさまざまな情報、働きを持っています。情報量の多さからいえば見たり聞いたりすることにかないませんが、動物の個体維持や種の保存などの原初的な生理に関する情報は、においによって運ばれています。
人間にとっては、そうした役割は減退しているようですが、心理的・精神的効果を及ぼす社会的な刺激としては、かなり注目されています。ドイツの精神科医テレンバハは、嗅覚を味覚とともに「人間の出会いを最深部で媒介する感覚」と表現しているほどです。

においは人間の生理や精神活動だけでなく、身体の機能にも影響を与えることが知られています。現在さまざまな分野で脳波や脳磁波を使った研究が進んでいますが、においの持つ働きや有効性を科学的に証明しようという研究が始まったのは、およそ1980年頃からのことです。

香りの生理心理的作用

鼻をつまんでリンゴを食べると生のジャガイモのような味になり、その状態で暗闇でオレンジとリンゴのジュースを飲み比べても違いがわかりません。このように、においは私たちの生理機能にさまざまな影響を与えます。
おいしそうなにおいは消化器の連動を高めて消化液の分泌を促し、悪臭は私たちの活動意欲をそぎ、ときには頭痛の原因にもなります。
アンジェリカという植物の根に含まれているエグザリトリドは、ジャコウのにおい成分であるムスコンによく似た化学構造を持っています。成熟した女性はこのにおいに敏感に感じ、排卵期に最も敏感になり妊娠すると鈍感になりますが、男性や少女はほとんど感じることがありません。
香料植物の学名のなかにはofficinalis(薬用の)とついているものが多数あります。これらの植物から得られる芳香油は、その香りを楽しむだけでなく、心身の病を癒す神秘的な力があると古くから信じられていました。
香りの効用に注目されるようになったのは20世紀前半のことで、フランスの医師ガットフォッセによって研究成果が発表され、民間療法に用いられるようになりました。
香りそのものの心身への効果は、主成分としてアルコール、ケトン、テルペン、エステルが多い芳香油は鎮静剤的な働きがあり、アルデヒド、フェノール類、脂肪酸エステルを多く含む芳香油は興奮剤的な作用があることが、1970年代にミラノ大学のP.ロベスティー教授のグループによって確認されました。

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今日、ストレスのたまりやすい複雑な社会の中で、フレグランスのなかに含まれる香りによって、次のような効用が期待されます。

  1. 気持ちや神経を休ませる鎮静効果
  2. 心を和やかに明るくしてくれる高揚効果
  3. 心身を温め情緒を安定させるリフレッシュ、リラックス効果

あなたも、このような香りで気分を変えてみてはいかがですか?

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森林浴と香り

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遠くの山々が「青い薄もや」がかかったように霞んで見えることがあります。これは、森林の木や葉から発散する香気成分を含んだ空気が上昇し、細かい水滴(0.1ミクロン以下)となって太陽光線の青い波長の部分を反射してそのように見えるのです。
旧ロシアのB.P.トーキンは、植物から発散されるこの成分を「フィトンチッド」と名づけ、森の中でこうした成分を吸入することを「森林浴」と呼びました。この成分には、周囲の細菌やウイルスの繁殖を抑える作用があります。また、その心地よい香りは、私たちの気分を爽やかにするだけでなく、精神的ストレスを解消するのに役立ちます。
そして、これら植物に含まれる香りの成分は、香料としてオー・デ・コロンなどの成分となっています。オー・デ・コロンなどのさわやかな香りで、オフィスでも学校でも気軽に森林浴の気分を味わってみませんか?

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花の香り

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花の色はさまざまで、それぞれ香りも違いますが、一般的に白い花は香りが強いといわれています。また、ほとんどの花は昼間日光にあたって香りを発しますが、中には夜になると昆虫を誘うために、いちだんと香りを高める花もあります。自然の摂理とはいえ、なにやら人間の世界にも似かよっているようです。
夢の島熱帯植物館では、ほぼ毎年夏に夜咲く花の鑑賞会を催しているようです。昆虫になって、甘い香りに誘われて見ませんか?

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