フレーバーの主な利用例

コーヒー飲料

コーヒーイメージ

嗜好飲料の代表格であるコーヒー系飲料にはコーヒー豆のみを原料としたものと、これに糖類や乳製品、乳化した食用油脂などの可食物を加えるものがあります。コーヒー豆から抽出または溶出したコーヒー分を含むコーヒー飲料は、ミルクの入ったものと入らないものに大別されます。

 

缶やボトルに充填する場合、材料を調合して均質化した製品は高温高圧滅菌器(レトルト)で殺菌されます。この加熱工程でコーヒーエキスの香気成分が分解されるので、耐熱性のあるフレーバーが必要になります。

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冷菓(バニラアイスクリーム)

「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」によりますと、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであつて、乳固形分3.0%以上を含むもの(発酵乳を除く)をアイスクリーム類といいます。省令別表で、乳固形分15%以上で乳脂肪分8%以上のものがアイスクリームと定められています。このほかに、乳成分含有量が少ないアイスミルク、乳固形分を3%以上含むラクトアイスがあります。

冷菓に使用する香料は、特に原料との調和が重要です。乳原料が多いアイスクリームでは、低温状態で香りのバランスがとれて香り立ちがよく、材料を混ぜてクリーム状にしたアイスミックスに均一に分散するなどの条件を備えた水溶性香料が主に使用されています。アイスクリームは、風味原料の組み合わせによってさまざまな味つけができます。バニラフレーバーで味つけしたものがバニラアイスです。

冷菓製造製造工程図

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菓子

ビスケット
ビスケットイメージ

ハードビスケット、クッキー、クラッカー、パイなどのビスケット類は、小麦粉に砂糖、油脂、卵、ショートニング、全粉乳、食塩などを加えて200℃以上のオーブンで焼いたものです。

フレーバーを生地に練り込んで焼くと、生地の水分が蒸発するときに香料成分も揮散し、低沸点の香料は残りにくくなります。また、高温で焼かれるため香料には耐熱性が要求されます。ビスケット類に最も多く用いられるのはバニラフレーバーですが、原料の乳製品本来の香りを引き立たせるために、バターやミルク、クリームなどのフレーバーも使われます。

ビスケット製造工程図

チョコレート
チョコレートイメージ
チョコレートは、カカオ豆から異物などを除去してロースターで焙焼し、胚乳だけを取り出してすりつぶしたカカオマスが不可欠です。チョコレート生地は、このカカオマスにココアバター、砂糖、香料、植物レシチンなどを混ぜて、さらに微粒子化したものを、コンチェと呼ばれる機械で精錬してつくります。 チョコレートにはバニラ豆の主要な香気成分であるバニリンを単独で用いることが多く、ヨーロッパのチョコレートには原材料にバニリンと表示してあるものがほとんどです。素材補強するために、チョコレートやミルク、バニラのフレーバーも併用されます。
キャンディー
砂糖と水飴を煮詰める工程でさまざまな形になるキャンディーは、脂肪含有量が多くてやわらかいキャラメルなどのソフトキャンディーと、水分が少なくて硬いドロップなどのハードキャンディーに分類されます。ハードキャンディーは、原料を150℃で煮詰めて水分を3%以下にして色素や酸味料とともに香料を加えてつくるので、香料の良否が製品の優劣に直接結びつきます。煮詰めた後110℃~140℃の段階で添加する香料には耐熱性が要求されます。フルーツ系のほか、ハーブやスパイス、メントールなどを配合した刺激的な風味を持つものも発売されています。ソフトキャンディーは、バニラやバター、ミルク、レモン、オレンジなどを配合した油性香料が主体です。

キャンディー製造工程図

チューインガム

チューインガムのベースは、チクルなどの植物性樹脂や酢酸ビニルなどの合成樹脂の基材に天然のワックス類や油脂類などを利用して均一に混ぜ合わせてつくります。

フレーバーの添加率がほかの菓子類に比べて5~10倍の1%程度と高く、キャンディー同様、製品の善し悪しはフレーバーによってほぼ決まります。使用するフレーバーは、何度も咀嚼(そしゃく)する関係から香りの強さと持続性が求められます。フレーバーはミント系が中心ですが、風船ガムなどではフルーツ系も使われます。

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調理食品

市販される調理食品には、調理缶詰や惣菜類、調理済冷凍食品、電子レンジ食品、レトルト食品などがあります。大量生産される調理食品は原料や製法が制限されるばかりでなく、生産や流通過程で風味が損なわれることが多くなります。このため、風味の劣化を補正するさまざまなエキスや調味料、香辛料、香料が利用されますが、この補正に重要な役割を持つのは香料です。食品加工業界では、これら材料全体を香料的に捉え、「調理フレーバー」「スパイスシーズニングフレーバー」「セイボリーフレーバー」と呼んでいます。

加工食品の付加価値を高めるために、それぞれの料理にベストマッチするようなフレーバーが必要なため、料理の数だけ調理フレーバーがあるといっても過言ではありません。

レトルト食品
レトルト食品 イメージ

1940年代にアメリカで開発されたレトルトパウチ食品ですが、日本では1968年のレトルトカレーが最初です。現在ではハンバーグ、ハヤシライス、シチュー、ミートソース、酢豚、麻婆豆腐などのほか、おでんやご飯類、ぜんざいなどまでレトルト化されています。

殺菌効果の面ですぐれているレトルト食品には、耐熱性の高い調理フレーバーの開発や加熱反応フレーバーなどの香料が大きな役割を果たします。

電子レンジ食品
電子レンジ食品 イメージ
電子レンジ加熱だけで食べることができる調理食品は、冷凍品が80%で常温品は20%です。電子レンジでは、調理の味を引き立たせる「焼け」が生じないので“焼け風味”や“焦げ風味”が生まれず、短時間に調理することから“じっくり煮込んだ風味”や“熟成感”も得ることが難しくなります。こうした点を克服するために、加熱調理フレーバーのほか、褐変反応(メイラード反応)を応用した“クックドフレーバー”と呼ばれる香料が添加されることもあります。
ダイエット食品
生活習慣病の予防や美容効果のために糖分や油脂の摂取を控えた低カロリー食生活が注目され、カロリーを低めに調整したダイエット食品やシュガーレス食品が女性を中心に人気を得ています。ダイエット食品はフレーバーへの依存が高く、たとえばシュガーレス食品では三温糖のような香りを使い、低脂肪食品では不足するボディ感や脂肪感を代替するフレーバーを添加するなど、ここでも香料は重要な役割を果たしています。

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食肉加工品・魚肉加工品

イメージ

食肉加工品で重要な役割を果たすのは、香料と同じように肉臭をマスキングして食欲を引き立たせるスパイスです。芳香と刺激性風味を持つ天然のスパイスは、収穫から乾燥、粉末化などの過程で微生物や不純物が混入することが多くなります。この弱点を克服するために開発されたのが香辛料香料です。

香辛料香料の原料は、天然スパイスを水蒸気蒸留してにおい成分だけを取り出した精油と、有機溶剤によってにおいと味成分を抽出したオレオレジンからなります。このほか、食肉加工品の品質向上をめざすミートフレーバーやスモークフレーバーなども開発されています。なお、香料を使用できる食肉製品は日本農林規格(JAS)で制限されています。

魚肉ハムソーセージの初期にはスパイス添加以外に香辛料や香料を利用することがなかった水産加工品の分野でしたが、かにフレーバーやえびフレーバー、ほたてフレーバーなど多くのシーフードフレーバーが開発されています。

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