ここで、食品衛生法と香料について触れてみます。また、あわせて新規指定香料についても述べます。
食品衛生法は昭和22年12月に公布され、翌23年7月に施行規則が公示され実質的な食品添加物の指定制度が始まりました。このとき、香料は、「合成著香料」という種別に入り、ふたつの単品香料を含めた12の「類別」に指定されています。その後何度かの改正を受けて、「分離指定」として単品香料が繁用香料として類指定から取り出され78品目が指定されました。また、類指定も18になりました。
その後、諸外国とわが国との添加物指定の違いから軋轢や事件などを通して、国際汎用添加物の指定(香料54品目、香料以外46品目)へ国の方針が転換されます。国際的な整合性を図るために「国際的に安全性が確認され、かつ、汎用されている未指定添加物の指定についての考え方」を示し、業者等による指定の要請を待つことなく積極的に安全性評価を行い、指定する方向で検討していくことになります。香料も平成16年10月に「国際的に安全性が確認され、かつ汎用されている香料の取り扱いについて」が公表され、これに基づき安全性評価が進められ、別のページ(http://www.jffma-jp.org/profile/infomation/index.html)にあるように次々に指定を受けています。(ここまでは「二十世紀食品添加物史」を参照させていただきました。)
これまで指定を受けた添加物である香料を構造別に分けた表が以下のものです。化合物により官能基がいくつもある場合は、複数、表に登場するものがあります。また、類指定のものは、類名に代表される区分にいれてあります。
なお、国税庁の揮発油税基本通達によりますと、高級アルコール、高級アルデヒドとはそれぞれ、1分子を構成する炭素の原子の数が6個以上のアルコール、アルデヒドをいうと定義しています。また、複素環とは、1つ以上のヘテロ原子を含む環状化合物をさします。
国際汎用香料の指定では、1分子を構成する炭素原子の数が5個以下のアルコールやアルデヒドが、さらには窒素原子を含むアミンや複素環化合物であるピラジン化合物、キノキサリン化合物などが指定を受けています。
<指定添加物(香料)の構造別分類表>
構造式分類 | H16.12月以前の指定香料 | 新規指定香料(H27.09.18現在) |
炭化水素 | 脂肪族高級炭化水素類、テルペン系炭化水素類 | 1-メチルナフタレン |
アルコール、フェノール | 脂肪族高級アルコール類、フェノール類、芳香族アルコール、イソオイゲノール、エチルバニリン、オイゲノール、ゲラニオール、シトロネロール、シンナミルアルコール、デカノール、テルピネオール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、ベンジルアルコール、マルトール、d-ボルネオール、dl-メントール、l-メントール、リナロオール | アミルアルコール、イソアミルアルコール、イソブタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロパノール、2-ペンタノール、2-メチルブタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブテノール、1-ペンテン-3-オール |
エーテル | エーテル類、フェノールエーテル類、アニスアルデヒド、イソオイゲノール、エチルバニリン、オイゲノール、1,8-シネオール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール | |
アルデヒド | 脂肪族高級アルデヒド類、芳香族アルデヒド類、アニスアルデヒド、α-アミルシンナムアルデヒド、オクタナール、シトラール、シトロネラール、シンナムアルデヒド、デカナール、バニリン、ヒドロキシシトロネラール、ピペロナール、ペリラアルデヒド、ベンズアルデヒド | アセトアルデヒド、イソバレルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、ブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド、3-メチル-2-ブテナール、トランス-2-ペンテナール、トランス-2-メチル-2-ブテナール |
ケトン | ケトン類、アセトフェノン、イオノン、パラメチルアセトフェノン、マルトール、メチルβ-ナフチルケトン | |
エステル | エステル類、アセト酢酸エチル、アントラニル酸メチル、イソ吉草酸エチル、オクタン酸エチル、ギ酸イソアミル、ギ酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、桂皮酸エチル、桂皮酸メチル、酢酸イソアミル、酢酸エチル、酢酸ゲラニル、酢酸シクロヘキシル、酢酸シトロネリル、酢酸シンナミル、酢酸テルペニル、酢酸フェネチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、酢酸l-メンチル、酢酸リナリル、サリチル酸メチル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、デカン酸エチル、フェニル酢酸イソアミル、フェニル酢酸イソブチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ベンジル、ヘキサン酸アリル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、N-メチルアントラニル酸メチル、酪酸イソアミル、酪酸エチル、酪酸シクロヘキシル、酪酸ブチル、クエン酸三エチル | |
カルボン酸 | 脂肪酸類、桂皮酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、酪酸 | |
ラクトン | ラクトン類、γ-ウンデカラクトン、γ-ノナラクトン | |
アミン類 | アントラニル酸メチル、N-メチルアントラニル酸メチル | イソペンチルアミン、フェネチルアミン、ブチルアミン、ピペリジン、ピロリジン、トリメチルアミン |
複素環 | インドール及びその誘導体、フルフラール及びその誘導体、1,8-シネオール、ピペロナール、マルトール | 2-エチル-3,5-ジメチルピラジン及び2-エチル-3,6-ジメチルピラジンの混合物、2-エチルピラジン、2-エチル-3-メチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、2,3,5-トリメチルピラジン、5-メチルキノキサリン、6-メチルキノリン、2-メチルピラジン、2-エチル-5-メチルピラジン,2,6-ジメチルピリジン、5-エチル-2-メチルピリジン、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、2-(3-フェニルプロピル)ピリジン、5-メチル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタピラジン、ピラジン、イソキノリン、ピロール、2-エチル-6-ピラジン、3-エチルピリジン、2,3-ジエチルピラジン |
含窒素、含硫化合物 | チオール類、チオエーテル類、イソチオシアネート類、イソチオシアン酸アリル | (3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ジメチルスルホニウム塩化物、アンモニウムイソバレレート |
(新規指定香料については平成27年09月18日現在のものです。)
*この項は、平成27年09月18日に改稿しました。